大阪市城東区で家財の整理をさせていただきました。...
大阪市城東区で家財の整理をさせていただきました。 ご自身で搬出が難しい大きい家具や、使わなくなった品を運び出し...
- 生前整理
- 2021.09.23
12月に入ると、街は一気に慌ただしくなります。成年後見人(保佐人・補助人を含む)として活動している方にとっても、年末は「やることが重なる季節」ではないでしょうか。金融機関や行政機関の年末年始休業への対応、冬の寒さや感染症への備え、親族からの相談や連絡、そして年明け以降に控える家庭裁判所への定期報告の準備など、対応すべき業務が集中します。
そのなかで意外と見落とされがちなのが、本人(被後見人)の「家財」の確認です。
この記事では、年末のタイミングで後見人が確認しておきたい家財のチェックポイントをはじめ、実務上で絶対にやってはいけない注意点、裁判所に納得してもらえる記録の残し方までを詳しく整理して解説します。
成年後見人の職務は、大きく「財産管理」と「身上保護(身上監護)」の二つに分かれます。一見すると清掃や整理整頓に思える家財の確認ですが、実は財産管理と身上保護の双方に深く関わる重要な業務です。年末に家財チェックを行うべき主な理由は三つあります。
第一に、一年の締めくくりの時期に財産全体を再確認できる点です。預貯金の口座残高や不動産の管理状態だけでなく、自宅や居室にある貴金属、美術品、骨董品、家電製品、家具などの動産を含めて、現状を正確に把握する好機となります。
第二に、冬場の適切な生活環境を点検できる点です。暖房器具の安全な作動状況、寝具の保温性、防寒着の有無など、本人の生命・身体の安全と健康に直結する物品の状態を実地に確認できます。
第三に、年明け以降の家庭裁判所への報告準備を円滑に進められる点です。家庭裁判所への定期報告の時期は事案によって異なりますが、多くの場合は年に1回報告を行います。年末のうちに動産の所在や収支のズレ、領収書の整理を終えておくことで、年明けの報告書作成作業が格段にスムーズになります。
最初に確認しておきたいのは、後見人が行う家財チェックの根本的な目的です。成年後見人の責務は、本人の財産を「把握し、保護・維持すること」であり、勝手に処分したり片付けを急いだりすることではありません。
本人の自宅や居室には、長年の生活のなかで積み重ねられた思い出の品や、一見すると価値がわかりにくい物品が数多く残されています。「もう古くて使えないだろう」「本人は施設に入所していて自宅に戻らないから不要だろう」といった後見人の個人的な感覚や独断で判断すると、後から親族との間でトラブルが生じたり、家庭裁判所から本人の意思決定支援を軽視したと厳しく指摘されたりする原因になります。
まずは「何が、どこに、どのような状態で存在するのか」という現状を正確に把握し、記録することに専念しましょう。

現金、預金通帳、キャッシュカード、届出印、各種有価証券の保管場所と数量の合致
不動産の権利証(登記識別情報通知書)、生命保険や損害保険の証券、年金関連の決定通知書
貸金庫を利用している場合は、その契約内容、鍵の保管状況、および最新の利用履歴
郵便受けに残された重要な通知(固定資産税、住民税、医療費、介護保険料、施設利用料などの請求書や督促状)
年末年始は金融機関の窓口や行政機関が長期休業に入ります。そのため、年末年始の期間中に必要な生活費や医療費、施設への支払い用現金は、12月中旬までに計画的に準備しておく必要があります。ただし、必要以上の現金を手元に置くことは盗難や紛失のリスクを高めるため、本人の生活規模に応じた必要最小限の範囲にとどめ、引き出した日付と使途を明確に記録しておきましょう。
指輪、ネックレス、高級腕時計、着物、絵画、掛け軸、骨董品などの有無と所在
前回の報告時に作成した財産目録に記載されている品々が、現在も指定の場所にあるかどうかの照合
保管場所に不正な変化がないか(第三者や親族による無断の持ち出しがないか)
価値の判定が難しい物品については、自己判断でリサイクルショップなどに売却してはいけません。スマートフォン等で明確な写真を撮影して記録に残し、必要に応じて専門の鑑定業者による査定を検討します。また、高額な動産については盗難火災保険の加入状況や、施錠できる保管場所の確保も検討すべき事項です。

自宅の場合:戸締まりの確認、水道管の凍結防止対策、ブレーカーやガス元栓の安全確認、郵便受けの溢れ防止対策
賃貸住宅の場合:家賃の引き落とし状況、賃貸借契約の更新時期、室内の傷みや衛生状態
施設入居・入院の場合:居室に持ち込んでいる私物の管理状況、紛失や破損の有無、施設側との預かり品に関する合意書の再確認
本人が病院に入院中であったり、介護施設等に入所していたりして自宅が空き家になっている場合、冬場の管理は極めて重要です。寒冷地での水道管破裂、屋根からの落雪事故、漏水、火災、さらには空き巣など、季節特有のリスクが増大します。定期的な換気や通水、防犯チェックをスケジュールに組み込みましょう。
暖房器具(エアコン、石油ストーブ、電気ストーブ、こたつ、電気毛布等)が安全かつ正常に動作するか
布団、毛布、防寒着、靴下など、本人が寒さを凌ぎ快適に過ごすための衣料品が十分にあるか
古く老朽化した暖房器具による火災リスク、一酸化炭素中毒、長時間の使用による低温やけどのリスクがないか
これは身上保護(身上監護)の側面に位置付けられる確認作業ですが、家財の点検と同時に行うことで最も効率的に把握できます。暖房器具の故障や衣類の不足が判明した場合は、本人の資力と生活環境に照らし合わせ、生活を維持するために必要かつ相当な範囲で速やかに買い替えや購入の手配を行います。

冷蔵庫、洗濯機、テレビ、固定電話、照明器具など、日常の生活に欠かせない家電製品の稼働状況
老朽化や破損により、本人の生活に支障をきたしている物品の有無
室内や押し入れに不必要なゴミ、期限切れの食品、過去の処方薬などが放置されていないか
家電や家具の買い替えを行う際に重要なのは、「本人の生活の質を保つための適切な支出」と「過剰な支出」を明確に区別することです。高額な支出については選定理由をメモし、購入時の見積書、納品書、領収書を必ず保存しておきます。

家財のチェックや管理の過程では、現場で判断に迷う場面が多々発生します。しかし、後見人としての権限を逸脱し、以下の行為を行うと責任を問われることになります。
一見すると価値のない古い家具や雑貨であっても、本人にとっては長年の愛着がある品であったりします。本人の同意を得ずに処分したり、業者に依頼して部屋を勝手に丸ごと片付けたりすることは、本人の意思尊重の義務に反します。
施設入所に伴う自宅引き払いなど、処分を検討せざるを得ない状況であっても、可能な限り本人の意向を丁寧に汲み取る努力をしなければなりません。判断に迷う高価な物品の処分にあたっては、家庭裁判所や後見監督人へ事前に相談し、指示を仰ぐことが不可欠です。
本人が生活の拠点としている(または過去に生活の拠点としており、将来戻る可能性がある)建物やその敷地について、売却、賃貸、抵当権の設定、さらには「賃貸借契約の解除(解約)」や「建物の取り壊し」を行う場合は、民法第859条の3の規定に基づき、必ず事前に家庭裁判所の許可を得なければなりません。
親族等から「自宅を処分して施設費用に充てよう」「アパートを引き払って整理しよう」という提案が出された場合でも、裁判所の許可なしに先行して動くことは許されません。
被後見人の親族から「自分たちが買い与えたものだから返してほしい」「どうせ使わないのだから譲ってほしい」といった申し出を受けることがあります。
しかし、被後見人がご健在である以上、相続は開始しておらず、法律上に「形見分け」という概念自体が存在しません。本人の財産はどこまでも本人のものであり、親族であっても無断で持ち出すことはできません。後見人がこれらを無償で譲ったりした場合、他の親族との法的トラブルに発展するばかりか、後見人自身の管理責任を厳しく問われることになります。
本人の家財を後見人自身やその家族、あるいは関係者が譲り受けたり、相場より安く買い取ったりする行為は、利益相反行為に該当します。どれほど不要に見える品であっても、後見事務の透明性を損なう行為は厳禁です。
成年後見事務において最も重要な原則は、「いつ、誰が、何を、なぜ行ったのか」を第三者に対して客観的に説明できる状態をつくっておくことです。家財チェックを実施した際は、以下の方法で記録を保存する習慣をつけましょう。
写真や動画による現状の記録:部屋全体、保管庫、貴重品の保管状態を日付入りで撮影します。
財産目録の適時更新:前回の報告内容と比較し、増減、破損、買い替え、紛失などの変更点があればメモを作成し、目録の更新準備を行います。
領収書・見積書の厳重保管:暖房器具の購入や住まいの修繕等にかかった費用については、必ず正規の領収書(原本)を保管します。高額な支出は見積書も一緒に保管します。
訪問記録・相談記録の作成:訪問した日時、立ち会い者、確認した内容、本人の様子や発言をメモに残します。裁判所や後見監督人等に相談した場合は、日付と指示内容も記録します。
これらの記録作業は、将来的に親族から不当な疑いをかけられた際や、裁判所への定期報告の際に、後見人自身の正当性を証明する強力な盾となります。

家財の確認作業は、事務的に進めると「物品のリストチェック」になりがちです。しかし、被後見人にとって眼前にある家財は、単なる経済的価値のある「モノ」ではなく、これまでの人生の歩みや思い出そのものです。
訪問にあたっては、本人の状態に応じ、可能な限り本人と一緒に室内を確認する姿勢が求められます。「このお道具は大切にされていますか」といった声かけを行うことで、本人の意向やこだわりを確認することができます。
意思疎通が難しい場合であっても、物品に触れたときの本人の表情や仕草などの非言語的な反応に注意を払い、本人の気持ちを汲み取る努力が求められます。
また、年末の時期であれば、本人の居室に小さなお正月飾りやカレンダーを飾る、季節の好物を一緒に味わうなど、生活の潤いに配慮したささやかな心遣いも大切にしたいところです。

12月の慌ただしい時期に後見業務を遅滞なく進めるため、以下のような段取りでスケジュールを組むことをおすすめします。
12月上旬(準備期) 前回の財産目録や直近の訪問記録を読み返し、今回の訪問で確認すべき項目をリスト化します。関係する親族や施設スタッフへ訪問予定日の連絡と調整を行います。
12月中旬(実施期) 本人の自宅や施設居室を訪問します。家財の状態、暖房器具の安全確認、冬用衣類のチェックを行い、写真を撮影します。必要な物品があれば、買い出しを行います。
12月下旬(年末対応期) 金融機関の年内最終営業日までに、年末年始に必要な生活費の引き出しや口座振替残高の確認を完了させます。支払った費用の領収書を整理し、出納帳と整合性を合わせます。
年明け1月以降(報告準備期) 年末に収集した写真や領収書、訪問記録を整理します。財産目録や収支状況表に最新情報を反映させ、家庭裁判所へ提出する報告書の作成に着手します。
※なお、家庭裁判所への定期報告の時期や提出書類の様式は、管轄する家庭裁判所によって異なります。事前にご自身が担当する事案の指示内容を確認してください。
年末における成年後見人の家財チェックで押さえておくべき極意は、以下の四点に集約されます。
目的の徹底:家財確認の目的は「処分や片付け」ではなく、「現状の正確な把握」と「保全」であること。
法的ルールの遵守:価値のある動産は独断で動かさず、居住用不動産の処分や解約が絡む場合は、必ず事前に家庭裁判所の許可を得ること。
説明責任の確保:写真撮影、財産目録の更新、領収書の保管を徹底し、第三者に対して説明できる客観的な記録を残すこと。
本人の意思と生活の重視:物の背後にある本人の歴史や感情に思いを馳せ、冬場を安全かつ快適に過ごせる身上保護の視点を持って臨むこと。
成年後見人の職務は、誠実な日々の積み重ねによって成り立っています。年末の丁寧な家財点検を通じて、本人の権利と生活をしっかりと守り、穏やかな新春を迎えられるよう環境を整えていきましょう。
※本記事は、成年後見実務における一般論および実務上の注意点をまとめた情報提供を目的としたものであり、個別の法律問題に対する法的アドバイスではありません。実際の判断にあたっては、管轄の家庭裁判所、担当の後見監督人、または弁護士、司法書士、社会福祉士等の専門家へご相談ください。
この記事の筆者
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